第5章 競技ポイント別確認事項
<事前業務全般>
□バイク、ヘルメット検査
- 審判員や検査官により誤差が生じることを理解。
「競技用具の整備義務」を考慮した「自主整備」を推奨
不十分な体制で行う「検査」から起こりえる主催者責任
- 教育的指導のために「バイクメカ・クリニック」を開催
- メカニックに通じた審判員の配置。
- 不適合の場合に備える。
予備用具の確保(メーカータイアップによる)
- バイク検査シートの作案
- 抜き打ち検査の実施
□ウェットスーツ検査
- ルール適合品と信じて専門店から購入していることを考慮する。
- ウェットスーツの素材特性から一般的に5%程度の誤差が生じる。
そのため、5mm±5%(5. 25mmまで)を許容範囲とする。ただし、この場合でも教育的指導を行う。
許容範囲を超えている場合は、審判長と技術代表が協議し決定する。判定ポイントは、大会区分、意図的に厚くしてあるかなどである。
- ファスナー部分やマジックテープの重なり部分は、不自然でなければ、現時点では、許容範囲とするのが妥当と考えられる。
- 厚さ計測メジャーの用意。(推奨用具:ミツトヨ/シックネスゲージ)
- 抜き打ち検査(トランジションエリアで実施)
□天候予測と推奨用具の説明
□大会指定競技備品
□競技質問コーナー
- 説明要員の配置。
- 競技関係資料の用意。
- コースビデオ紹介。
□競技説明会(レースブリーフィング)
- コース、ローカルルール、注意事項をビデオ映像化の補足使用
- 選手権部門と一般部門を分ける場合あり。
- 外国選手は、分けて実施する。
- コーチなどの出席を要請する。ルール徹底に効果的。
- 報道取材を限定付きで認める。ルール説明のためのオブザーバー参加。
□遅刻者の対応
- 「審判員も遅れることがある」。遅刻対応の基本精神となる。
- 「重い用具持参。レース直前の緊張。遠隔地。トイレ不足での過度の待ち時間」などを考慮する。
- 事前に設定した時間に不合理がないかを検証する。
- 会場に来る途中で事故に遭遇し、人命救助に当たっていたなどの理由もあり得る。
- 遅刻で出場停止にする場合は、審判長は、技術代表や実行委員長などから状況を確認し、完全に本人の責任が認められる場合にのみ失格とする。
<事前マーシャル>
□コース試走と現場視察
- 問題点の報告と改善提案
- 選手やコーチからの意見を重視する。
□選手の練習中の、ヘルメット不着用と交通ルール違反の監視
- バイクでの巡回、交差点での監視
大会前日には必ず実施。2日前から実施できれば良好。
□パーティ・催事での不適切な態度は、その場で注意する。
- 「すいませんが、食べるのはもう少し待ってください」など、ていねいに注意。
- 場の雰囲気に相応しくない行為、サングラスを掛けているなども、「このような場所ですから、おやめください」と気をつかいながら注意する。
<マーシャル集合時間と審判会議>(一般実施例)
□大会前日(土)
- コース視察、マーシャル全体会議など
- 技術代表と審判長との打ち合わせ。
□大会当日(日)
- スタート2時間以上前:スイムスタート地点集合
- バイク終了後、ラン終了後:審判報告会議、必要に応じ随時開催
- 主催者との反省会。選手からの取材。
□技術代表や審判長など主要審判員は、早め(3〜4日前)に現地入り(推奨)
<審判全体>
□タイムテーブルの確認
- 全体運営のタイムキーパーの配置。特にスタートのタイム管理は厳密に。
- アナウンスとの連携。
□配置と必要備品の確認
- ホイッスル、Y/Rカード、旗類、報告書類、無線等、大会運行表、安全ピン、他
□マーシャルの腕時計の時報統一
□JTU審判ユニフォームの着用
□JTU公認審判員証のマーシャルベストへの表示
□各責任者(チーフ)への連絡
□マーシャルレポートと報告書の提出(改善提案義務)
<スイムスタート>
□スイム競技環境のチェックと報告
- 水温、気温、風速、風向、波高、海洋生物情報、他
- 関係機関との調整
- スイム救助体制の確認。
- 「公式掲示板」への競技環境の表示とアナウンス
- ウェットスーツ使用の決定(スタート1時間以上前。一般に2時間前)
審判長、技術代表そして選手代表やコーチをまじえ決定する。
- 97年度ワールドカップは20度基準。
98年度から日本選手権などで20度基準を適用。(従来は、21度基準)
- 上記の温度以上でも、波の状況やクラゲなどにより許可することがある。
□用具使用の制限とチェック
- ウェットスーツ着用可否と告知
- 着用制限に関する目視チェック
- ウェアをスイムパンツ内に入れることは、許容範囲
□ウォームアップ時間の確保。規定時間の厳守と誘導
- 専用エリアの設置
- 早すぎるウォームアップ時間の打ち切りは不可。
参加人数、水温・気温にもよるが、一般にスタート前30分までは許可。
選手権レベルの限定レースでは、直前(10分から15分前)まで許可する
□ウェーブ区分の選手確認
- エリート/エイジグループ区分。男女区分。年齢別区分。
- 年齢別区分の場合、ふくらはぎにアルファベット区分マーキング。
□スタートエリアへの拘束時間
- 計測やスタートセレモニーのためであっても、水やトイレが不十分で日陰や保温施設がないエリアに長時間拘束することは避ける。
□スタートラインでの整列
- 早すぎる整列は、混乱を招く傾向あり。
- ワールドカップでは整列直後にスタートする方法実施。
「陸上競技方式」の採用。
- 待機ゾーンから、スタートラインに出し、直後にスタートする計画立案。
- フローティングスタートの場合も、入水時間を綿密に検討し待機時間を最短にする。
- シード選手の前列スタート(ワールドカップで実施)
- 上位選手の紹介に続き、順次スタートラインに着く方法(ワールドカップ)
□スターター補佐と合図指示確認
- マスター時計の設置と管理責任者。
- 審判長・審判員のスターター奨励(VIPの場合完全補佐)
- リコーラーの配置
□不正スタート(フォールス・スタート)対応
- マーシャル、カヌー、ボート、ジェットスキー、ダイバーなどによる防止態勢
スイムコース前方20m付近に待機する。
- 再スタートの方法とタイミング
- 再スタートの決定は、審判長また担当マーシャルが行う。
その他の審判員が、ホイッスルを鳴らすなどはしない。
- 打ち上げ花火、観客の口笛などに注意。事前のアナウンス。
- VTRでの確認
□危険行為のチェック。特にスタート時、コーナーなど。
<デュアスロン/第1ラン・スタート>
スイムスタート時と基本は同じ。以下、主要ポイントのみ。
□第1ラン競技環境のチェックと報告
- 「公式掲示板」への競技環境の表示とアナウンス
低温、雨天、降雪、強風などの場合の注意、競技内容の変更など迅速に。
□用具使用の制限とチェック
- レースナンバーの適正着用の目視チェックと注意指導
- バイクヘルメットの着用は禁止
□ウォームアップ時間の確保。規定時間の厳守と誘導
- ウォームアップ用専用コースの設置
- 十分なウォームアップ時間の確保と直後のスタート配慮
□ウェーブ区分の選手確認
□スタートラインでの整列
- 整列直後にスタートする方法実施。
- 待機ゾーンから、スタートラインに出し、直後にスタートする計画立案。
- シード選手の紹介と前列配置
□スターター補佐と合図指示確認
□不正スタート(フォールス・スタート)対応
□危険行為のチェック。特にスタート時。
<デュアスロン/第1ランコース>
□一斉スタートでの転倒者などの監視・救護態勢
□その他は、第2ランと基本は同一
<スイムコース>
□安全管理と選手・スタッフ指導
□違反行為の防止対応と注意
- 危険行為のチェック。
- コースロープを利用した違反監視
□指定コースの競技確認
□リタイア選手の確認と対応
- 各ポイント通過選手の把握と報道は重要。
- 残ったバイクの確認など。
*スイムが終了しているのにバイクが残っている場合の確認。
□上陸の確認
□計測・周回ミス対応
□救助監視体制の確認と指示
- 泳者に近づきすぎ、あるいは遠すぎる船をチェック。
- 敏速な救助には、離れすぎていないかをチェック。
- 直接救助船は、ゴムボートや小型ボート、サーファーなど
□報道プレス船のチェック
- 泳者に近づきすぎる、スクリュウ波、廃棄ガスなど事前チェック
<スイム/バイク(S/B)トランジション>
デュアスロンの場合でも、基本は同様とする。
□選手誘導の管理
□計測実施の指導管理
□バイク設置方法の確認
□バイクラック周辺の管理
- ウェットスーツ、ゴーグルなどの散乱を整備
- 悪質な場合は、レースナンバーをチェック。審判長に報告
□不適合用具類のチェック
- バイク、バイク用具の抜き打ち検査
- ウェットスーツの抜き打ち検査
- 違反用具の抜き打ち検査
- クーラーボックスやバッグなどが、競技に邪魔になると判断されるときは、移動することも必要。
クーラーボックスについては、暑さを考慮し、サイズ限定で認めることも検討。
□観客・報道関係者の管理(許可者以外の立ち入り禁止:96JTU ルール)
- 原則として主要テレビ以外立ち入り禁止
- コーチなどの立ち入りも禁止。
海外選手で言葉の問題があるときは、事前に監視体制を強化して立ち入り許可。ただし、時間制限を設ける必要あり。
- テレビ取材の安全チェック。選手への接近しすぎ注意。
テレビコードのからまり注意。
□バイクラックでの危険・乱暴行為の監視
- 他選手の用具を“著しく”動かした場合、もとに戻すことを指導
- 違反者の記録と状況報告
- コース上に立ち往生するなど、競技進行を妨げているときは、誘導アシストする。混乱状況が予想されるときは、バイクを強制的にでも退ける。
□エリア内乗車禁止の監視と注意警告
- 乗車しようとしているときは、ホイッスルで早めに注意する。
危険のない範囲で、「バイク正面に立ちはだかる」ことも効果的。
□ヘルメットストラップの装着義務の徹底(96ITU/JTU ルール)
- ストラップを締めてからバイクを取る。
- バイクをラックに掛けてからストラップを外す。
□選手のレースナンバー、ユニフォームを整えさせる
- 乗車ラインで、不備な競技者を停止(イエローカード)させての注意も必要
ストップアンドゴー・ルールの適用が可能。
- 安全ピンを携行し、必要に応じ手渡す。
- ウェアがどうしてもうまく着れない場合、「瞬時にできるアシスト」を許容範囲とする。(ワールドカップで適用。一般にも適用可能)
□乗車ラインの監視と指導(96JTU ルール)
- 前輪先端がラインを越えたら乗車許可。
センチメートル単位で管理することは難しい。
そうするには、写真判定の導入が必要。(当ルールは検討中だがセンチ単位で管理するものではない)
- ライン手前で乗車しそうな場合の事前注意。
これを審判員が的確に行うため、腰を落とし素早く動ける態勢が必要。
- 「乗車ゾーン」対応が、国際的に導入され始めた。
<バイクコース>
□安全管理と選手・スタッフ指導
□違反行為の防止対応と注意
- キープレフトの指導(詳細基準は、交通規制状況などによるが、一般に、左端から1〜1. 5mの範囲、または有効コースの1/3程度を走行することが基準)
- 観客が多い場所では、選手心理として観客から離れたいという意識が働く。コース左端が不整備であるためにキープレフトを守りづらいこともある。このような区間では、多少の中央寄り走行は、一般に、より確実な安全のために許容範囲と判断することがある。
- センターラインを出ないことの指導管理(警察指導)
- 前方注意義務の指導
「前方に観客が群がっている、仕切りは明快でない..選手はエアロポジションで必死に走る..バイク後半で疲れも出ているだろう..顔は前方ではなく下向き加減である..」。
このような状況では、選手は、交通規制があり、観客の飛び出しや横断などは予想だにしていない。ホィッスルを軽めに吹いて、注意を促す場面である。このような状況で現実に事故が起こっている。選手の目線にも注意を向ける。「前をよく見て」と注意することも心得。
- 危険箇所、急坂、選手同士が接近しているときのエアロポジションでの注意
ブレーキがすぐ掛けられる態勢が必要であることが多い。
□左側追い抜きの対応
- 左側追い抜きは禁止だが、これを誘発した先行者に問題があることが多い。
- バイクマーシャルの判断によるが、このようなときは、追い抜いた選手よりも、「センター寄り走行の選手」に注意を与え、状況によりストップアンドゴー・ルールを適用すべきことがある。
□ドラフティング走行の対応(禁止の場合)
- ◇ドラフトゾーンの距離や許容タイムにかかわらず、チェックすべきことは、「追い抜く意思を持って、前に進んでいるかどうか」である。ベタッと後方についていれば、許容タイム以内でも、注意・警告を出す。
- ◇上り坂付近で、双方もがきながらペダルを踏んでいるような状況では、多少接近していても、許容範囲と認める場合が多い。
□コーン設置の調整
- 事前にテスト走行を重ねても、カーブ付近の「コーン設置位置」は、競技が始まった後に微調整が必要なことが多い。
“技術審判員”の配置。
- バイクマーシャルがこれを感じたら、スタッフに指示を出すか、あるいは自らが微調整したほうが良い場合がある。
- センターラインへのコーン設置は、余りに密に設置するとかえってバイクマーシャルや緊急車両の通行の妨げになることがある。一般的に、選手が遠方から見て一直線になって見える程度で十分センターラインのコーン設置は機能しているといえる。
□一般車両との接触事故の防止
- 完全規制でない場合、あまりに危険な走行の一般車両には注意して理解を求める。
- 選手は、《一般車両の運転手と同様の感覚》で、前方や周辺を注意しながら、減速と加速を繰り返しながら競技することが求められる。
- バイクマーシャルや現場スタッフは、一般車両と選手が接近しているときは「両者がどう動いて行くかを予測しながら」コントロールするものである。
□報道車両の指導監視
- ドライバーとの事前の打合せが最重要事項。
- 先導白バイとの事前打合せも必要(最低100m先を走行願う)
- 急坂やカーブ地点では自転車のほうが早いことを認識願う。
- 危険が感じられるときは明確に安全運転を要請する。
□危険・事故対応(安全優先)と担当スタッフへの指導。
- 国際的なトップ選手と一般選手のバイク走行は著しい違いがある。例えば、カーブ地点では、コーナーをぎりぎりに走行することが多い。コーナー付近の完全防護と砂利ゴミの掃除。掃除用具の準備。
- カメラマンや観客そして審判員が、これに気付かず接触することがある。
- フェンスの脚部が地面に設置していて選手から見えないような場合には、コーンを置くなどにより注意を促す必要がある。
□転倒時の緊急対応(ワールドカップで採用。一般でも採用奨励)
- 後続選手への減速指示(旗を振るなど)
- 転倒選手がすぐ立ち直れない場合、速やかにコース横に避難させる。この場合、手を貸すことは安全優先のためであり、審判員に許容されるアシストの範囲内とする。
- このような突発的な状態では選手が動揺したり興奮している。審判員は、このことをよく理解し対応する。「大丈夫ですか(審判員)」「大丈夫です(選手)」と無条件に答えても、実際にはそうでないことがある。
- 転倒した選手に声を掛け「意識が正しいか」を確認する。出血がないか、ケガの状況はどうかも確認。
- 次に、「ヘルメットが割れていないか。バイクは歪んでいないか。用具は外れていないか」などを点検する。
- 状況が思わしくないのに続行の意思がある選手には、「安全が第一です」という気持ちを込めた言葉でリタイアを促すことも必要。
- これらの対処の後、問題ないと思われ、本人の再復帰への意識が明快なときは、「注意して続けてください」との一声をかけ送りだす。
- 転倒の事例は、後々の参考になるため、周辺状況をメモし報告する。
□制限時間遅れ、周回遅れなどの対応(ワールドカップ)
- ワールドカップでは、周回遅れ(可能ある場合も)コースアウト(DNF)
- 先導バイクマーシャルと最後尾選手を追うマーシャルで管理
- レッドカード(赤旗)または口頭指示でコースアウトさせる。
- コースアウト選手のレースナンバー(ゼッケン)に、赤のマジックインクで×印を付ける場合あり。
□周回の確認(係員の確認とメーター確認)
□周回指示(ラップ表示:残り数を表示)
□観客の危険防止と誘導(周辺住民への事前注意の徹底)
- 観客の飛び出しの厳重注意。監視態勢の強化。
- 審判員は、観客の危険行為に注意を与えるときには出来るだけ口頭で「お願いします」という意思を込めて注意したい。
ホイッスルを使用するときは、選手に対するものと間違わないよう配慮する。
□犬猫など動物の飛び出しチェック。
- インドでは牛が出てきた例あり。
- 事前広報での注意と協力要請
<エイドステーション>
□バイク選手と並走してのエード物品渡しは危険。前に出ての手渡しも注意。
- スタッフの右手が選手のハンドル手元当たりにくるように。
- スタッフの身体を中心に回転するような要領。
- 審判員や責任者は、危険な方法を注意し、手本を示し現場指導する。
□減速した選手に追突してケガをすることが多い。要注意。
□減速せずにひったくるような受け取りかたは注意・警告。審判長への報告。
- ただし、一般でも競技に集中しているため、やむを得ない状況であるかどうかの判断も必要である。
□万が一、スタッフに罵声を浴びせたなどは、いかなる罰則よりも重い。
- 大会がボランティアや一般スタッフにより運営されている根源に係わる重大事項である。
<バイク/ラン(B/R)トランジション>
基本は、S/Rトランジションに準じる。デュアスロンも基本は同一。
□フリーバイクラックの導入(ワールドカップで適用)
- バイク、ヘルメットともに自由に置ける。
- バイクは、随時スタッフが片づける。
- 競技の進行を妨げる可能性があるときはアシスト
ラックの片付けが間に合わないときは、バイクを受け取ることもある。
□エリア内乗車禁止の監視と注意警告
- 選手の挙動に注意していれば、違反しそうかどうかは事前に判断できる。
□ヘルメットストラップの装着義務の徹底(96ITU/JTU ルール)
- 「ストラップ」とコールする。審判員みずからのアゴの部分を指さすことも。
□選手のレースナンバー、ウェアを整えさせる
- 乗車ラインで、不備な選手を停止させての注意も必要。
- 必要であればピンを渡す。
- 「適正な状態にするための瞬間的な補助」の範囲で、審判員が手を貸すことも許容範囲とする。
□降車ラインの監視と指導(96JTU ルール)
- 降車は、前車輪の先端がラインを越える前に降車する。
瞬間的なことであり、流れを重視し、センチ単位の厳密さを求めるものではない。(ルール検討調整中)
- 降車とは停止とは違い、ライン手前でストップさせることではない。STOPのコールは避ける。英語では、DISMOUNTである。
- エイジグループでは、ストップさせたほうが安全なことがあるが、連続して選手が入ってくるようなときは、「安全な流れ」を優先したほうが良い。
- この地点は重要なので、状況によりラインの正面に間隔を開けて待機し、「自転車の正面に両手を挙げて立ちはだかる」ことも必要である。ただし、この場合でも、選手が半身になってラインに向かって降りてくる直前にコースを開ける。上位選手の場合は、特に審判員の俊敏な動きが不可欠となる。
- 降車ライン(ゾーン)に迫る選手が「ブレーキに手を掛けているか。意識してスピードを落としているか。片足を下ろしつつ前進しているか」などを観察する。この感覚が分かれば不必要にホィッスルを吹かなくても、コントロールできる。
<ランコース>
□選手と観客の総合的な安全の管理
- 選手は最短距離を取るために、観客と接触する可能性大。要注意。特にコーナー付近では、観客への指導注意が必要。
□ユニフォーム、レースナンバー取り付けの確認と指導(ピンを渡す)
□適正コース走行の管理と指導
- 選手には、コースを知る義務がある。そのため、周回数などの場合、「不安のある指示」を出すよりは、出さないほうがよい場合がある。
□周回遅れ選手の判定と対応
□リタイア・負傷選手の保護
- JTUルールでは、本部に届け出ることを義務付けている。過度の疲労、負傷の場合は、各スタッフが救護し、選手に代わり本部に報告する。
- コース状況、大会によっては、選手が、最寄りのエイドステーションか審判員にリタイアの意志を告げることで本部報告を省略したほうが良いことがある。ロングディスタンスで適用され得るだろう。
- 大会によっては、リタイア選手の本部通知義務を省略できる場合がある。
□「マウンテン・バイク」での審判員
- モーターバイクでランを追走することは難しい。廃棄ガスも出る。マウンテン・バイクでのマーシャルが世界的な流れとなった。
- マーシャルは、自転車用ヘルメットを着用する。テレビカメラの邪魔にならないよう、安定した走行を心掛ける。選手の間のジグザグ走行は不可。
- 基本位置は、選手の後方、センター寄りである。
<ランフィニッシュ(総合フィニッシュ)>
□総合的管理指導
□総合フィニッシュ着順判定。記録担当者と連携
- 競り合った微妙な着順判定の心構え。
- ビデオでの着順確認。
□プレスの動向監視と指導
- 1位が入る頃、プレス関係が必ず群がることを予想し対処する。
□フィニッシュ近くでは、サングラスを外すことを積極的に奨励
□不正ユニフォーム、不正レースナンバーの現場注意
- 当業務は選手のモラル育成に重要で効果的
- 審判長への報告(随時)
□緊急対応のアシストと確認
- 飲み物の準備。タンカと医療担当者の敏速な対応。
- フィニッシュ直後に待機。
<表彰セレモニーでの審判>
□正しいウェアの確認と指導
- 着用なしなどは大会Tシャツを着させるなどの対応
- 帽子、サンダルなども事前に注意
公式キャップがある場合は、許可する場合あり。
□サングラスを外す指導
□国歌演奏の時の私語の注意
<審判裁定と主要業務>
□マーシャル報告の収集と判定
□記録結果の確認と確定
- 審判長/技術代表の確認と確認サイン、確認時間を記録表に明記。
□「公式掲示板」へのペナルティー、結果などの掲示
- 「公式掲示板」横で待機し、質問・抗議に応える。
- 「公式掲示板」は、選手の動向により確実に見えるよう設置。
- 「公式掲示板」の位置は、事前に告知。
□抗議、上訴の対応(本部で規定時間待機)
- 聴聞会の開催。場所の事前確保。
預託金(供託金)の管理。上訴が受け入れられたとき返金。
レース後で預託金がない場合の対応。
- 総合裁定と報告の作成(発表へ)
- 大会上訴委員会で調停できなかった場合、選手には所轄競技団体の理事会、さらには、上部組織への上訴が認められる。
- 供託金は、陸上競技などにならって、今後「預託金」とする。
<総合課題>
□安全管理と公正な競技の推進
- 「不安部分、選手からのクレーム」などを尊重して対応。
□競技・運営ルール適正化のための研究・研鑽
- 「来年いかに改善すべきか」に重点を置いた建設的な報告が有効
□トライアスロンの総合的な発展と普及に係わる検討
- 失敗から学ぶ精神。全国の大会が一つの失敗から学ぶ連携。
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